5週目

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まとめ

1. 気体の絶縁破壊の概要

  • 絶縁破壊: 気体が高電界によって導電性を帯び、絶縁性を失う現象。これにより電流が流れるようになる。
  • 電子の供給源: 金属表面(光電効果)、気体分子(光電離、放射線による電離)

2. 電子の移動と衝突電離

  • 電子の加速: 電界 \(E = V/d\) によって電子は加速され、自由行程 \(λ = 1/nσ\) を進む。
  • 運動エネルギー: 電子の運動エネルギーは \(eEλ\) であり、これが気体分子の電離エネルギーを超えると衝突電離(α作用)が起こる。

3. α作用と電子なだれ

  • 初期電子: 光電効果や光電離によって供給された電子。
  • 衝突電離(α作用): 電子が気体分子に衝突し、新たな電子と正イオンを生成する現象。
  • 電子なだれ: 初期電子が複数回のα作用を繰り返すことで電子と正イオンの数が指数関数的に増加。

4. 放電開始の理論

  • タウンゼント理論: 低気圧下での放電開始を説明する理論。
    • γ作用: 正イオンが陰極に衝突し、新たな電子を放出する現象。これにより初期電子の供給が自給自足される。
  • ストリーマ理論: 高気圧下および短時間での放電開始を説明する理論。
    • ストリーマ: 電子なだれにより生成された正イオン柱が電界を強め、次々と新たな電子なだれを発生させる。これにより導電性が高いストリーマが形成され、電極間が短絡する。

5. 火花電圧と絶縁破壊電圧

  • 火花電圧: 絶縁破壊が起こる電圧。平等電界では1気圧、ギャップ長1cmで約30kV。
  • パッシェンの法則: 火花電圧は気圧とギャップ長の積による関数。
    • 実験式: \(Vs = 24.05δd(1 + 0.328/√(δd))\) [kV]
    • 相対空気密度: \(δ = 293p/(273 + T)\)

6. 絶縁破壊における正イオンの役割

  • タウンゼント理論: 正イオンが陰極に衝突し、新たな電子を供給。
  • ストリーマ理論: 正イオン柱が電界を強め、新たな電子なだれを誘発。

7. 絶縁破壊の実例

  • 空気: 大気圧または加圧して使用。
  • 六フッ化硫黄 (SF6): 数気圧に加圧して使用。
  • 真空: 絶対圧が10^-4 Pa以下の高真空。

まとめ

気体の絶縁破壊は、初期電子が電界によって加速され、気体分子との衝突を通じて新たな電子を生成する過程によって起こります。これにはタウンゼント理論とストリーマ理論があり、それぞれ異なる条件下で放電開始を説明します。パッシェンの法則によると、火花電圧は気圧とギャップ長の積に依存し、これを理解することで高電圧装置の設計や安全性評価に役立ちます。

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確認問題
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